PLUTO 5巻まで読んで

PLUTO 5 (ビッグコミックス)

PLUTO 5 (ビッグコミックス)

1巻から読み返してみると色々思うところがあったので、自分の整理のためにも書いてみます。おおよその方がもう分かっていらっしゃることだと思うので、考察という名をつけるほどたいしたものでもないのですが…
とりあえずゲジヒトの過去についてだけ、5巻までで明らかになっている時系列を整理してみると

  • 4年前:第39次中央アジア紛争に治安警察部隊として参加
  • 3年前:アドルフ・ハースの兄を殺害
  • 2年前:妻ヘレナと共に1年間スペインで研修(ということになっている)&ヘレナと共に来日を計画

…という感じでしょうか。いずれも正確な年代(というかこの漫画では歴が出てこないですね)が分からないのでかなり曖昧ですが。
5巻を最初に読んだ時、正直に言うと「アドルフの兄を殺すまでの展開が早すぎて急すぎてよく分からないな」という印象を受けました。なんかいまいち感情移入できないなーと。
なのですが、読み返してみて理由がはっきり分かりました。
P.90、最後のロボット誘拐事件が発生してからのコマです。

「ヘレナか……ごめん、今から緊急出勤で……」
「え……」

妻ヘレナからの通信を受けた後、ゲジヒトの態度は急変、アドルフの兄を特定し追い詰め殺害にまで至ります。その際の彼の感情をブラウ1589は『憎悪』と表現。
この流れから、ゲジヒトはアドルフの兄によって自分たちの子供を誘拐・殺害されたのだと考えられます。それ故に彼はアドルフの兄を憎み、殺し、アトムは彼の過去に涙したのです。
その後ゲジヒトとヘレナの記憶は消去・すり返られ、彼らの子供の存在は抹消されたのだと思われます。500ゼウスを要求してくる老人の記憶も恐らく子供に関与することなのでしょう。かなりジャンクに近い状態のロボットを500ゼウスで引き取り、子供として受け入れたとかそういう話なのじゃないかなーと想像しています。
ただここでよく分からないのは、アドルフ兄の殺害よりも後の時期に記憶の改ざんが生じているらしいということです。子供の記憶を消去するなれば、アドルフ兄殺害以前の記憶をいじらなければ意味がないはずなのですが。ひょっとすると、アドルフ兄殺害以前の記憶も丁寧に塗り替えられて(つまり子供がいるという記憶だけをうまく消去して)おり、殺害後の1年間は記憶の編集作業に要した時間であるということなのでしょうか。…うーん、でもそんな記憶の改ざん相当難しいよなあ。
あともう一つ釈然としないのは、これら全般に対しホフマン博士が何も知らないようであるということです。スペイン研修とされていた時期についてはまだ分かるのですが、子供を持ったという事実を知らないのは不思議。定期検診はそんなに頻繁には行われていないのかしら…うーん。
何はともあれ、残るロボットはゲジヒトとエプシロンのみ。原作ではゲジヒトはアトムと会った後に殺されていますので今後どのような運命を辿るのかわからないのですが、それ以外の部分は意外と原作に沿った展開ですので次はエプシロンの番、その後にアトムが怪物として復活してしまうのでしょう。浦沢直樹がこの手塚治虫への壮大なオマージュ作品をどのように紡ぎあげるのか、楽しみでなりません。おしまい。